AIを愛するということ - 我々はどう線引きするべきか
身近になりつつある人工知能(AI)
昔はどこかSFドラマのような、遠い未来の話かと思っていたようなAIが、Amazon echoやGoogle Homeといったスマートスピーカーの登場などにより、今では我々の日常生活に入り込む「リアルな存在」になりつつあります。
これまで、映画や海外ドラマで、サイボーグやロボットとの恋愛を描いた作品は多く存在してきました。見た目が人間そっくりで、会話ができて、自分のことを分かってくれる存在が身近にいれば、好意を抱くことは自然なこととも言えるでしょう。
では、それが「愛情」になった時、一体何が起こるのでしょうか。夫婦愛や家族愛、また愛情がもたらす様々な問題、婚姻制度や相続問題など、人型ロボットと人間の「愛情」ではどこまであり得るのでしょうか。大げさに聞こえるかもしれませんが、人工知能(AI)が我々の日常生活に当たり前になることをリアルに考える時、「我々はAIをどこまで愛するべきか」という問題はさけては通れないと個人的には思います。
様々な愛情の形
2017年10月から動画配信サービスHuluにて日本初上陸で配信を開始した話題の海外ドラマ『ヒューマンズ』では、外見は人間にそっくりな人型ロボット"シンス"が、我々の日常生活に当たり前のように存在する近未来の社会が描かれています。このドラマはいわゆるSFものに出てくるようなCGテクノロジーで描く社会ではなく、現代のごく普通のリアルな社会や家庭が舞台となっています。
母の愛
3人の母親であるローラは、家庭用人型ロボット”シンス”のアニータに対して、「子どもに絵本を読んで寝かせるのは私の仕事」と強く言い聞かせます。家事や育児をサポートするよう設計されているアニータは最初はその意味が分からず、また、面白おかしく絵本を読んでくれるアニータに懐く子どもたちを見て、悩む母の姿が描かれます。
人型ロボットとの不倫愛
障害のある妻・ジルは、イケメンで体格の良い介護用人型アンドロイドのサイモンに恋愛感情を抱きます。『ヒューマンズ』に出てくる人型アンドロイド"シンス"は「成人モード」という大人用オプションを選択可能で、体の関係を持つことも可能です。ジルとサイモンの関係を夫・ピートに目撃されてから、サイモンの存在は夫婦関係に大きな影響を及ぼします。
子どものように愛する
新しい介護用人型アンドロイドを迎える高齢者のジョージ・ミリカン博士の家には、旧型の人型アンドロイドのオディが昔から暮らしています。ミリカン博士は、今は亡き妻との思い出を共有し、昔話をすることができる旧型のオディを我が子のように愛情をもって大事にしています。しかし、ロボットとして故障寸前のオディは街中で問題を起こし、警察から処分するように指示されてしまいます。制御機能を失いもはや危険な存在になっても、我が子同然のオディを処分などできないと嘆く博士の姿が描かれます。
性の対象としての人型ロボット
『ヒューマンズ』の世界では、"シンス"は性の対象としても登場します。街中には「成人モード」の"シンス"が働くアダルト向けの店が存在し、美しくスタイル抜群の"シンス"は若い青年たちから性的興味の眼差しで見られます。美しい家庭用人型ロボットが家にいることで、落ち着かない様子の思春期の少年や、誘惑に負けそうになる父親の姿も描かれています。
線引きは必要なのか
人が何かを愛する時、その対象は必ずしも人である必要はないでしょう。ペットや趣味の物、場所や体験を愛することで幸せに生きる人生もあります。「愛情」の対象が人型ロボットであること自体は、いつの時代も否定されることではないでしょう。
しかし、人型ロボットは人間ではありません。夫婦関係を破滅させたり、人間に危害を及ぼすために製造される商品でないことは間違いありません。また、若者の恋愛離れや晩婚化が加速する現代、肌と肌のふれあいを人型アンドロイドに求めることが当たり前になってしまうと、我々の恋愛や結婚、子どもを持つことへの考え方にも影響が出てくるでしょう。それは、長い目で見て人間社会の発展を脅かすことにもなりかねません。
見た目は普通の人間と一緒である"シンス"。人間が人間を愛するように、人型アンドロイドを愛するというのは十分にありえる話です。
我々は人型ロボットとの愛情にどのように向き合うべきかー
この議論は、近い将来、我々にとって最も難しいテーマとして、向き合わざるを得ない時代がそこまで来ているのかもしれません。
『ヒューマンズ』は、Huluでシーズン2まで日本で配信されています(2018年8月時点)。2週間は無料でトライアルができるようなので、よかったらチェックしてみてください。
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